主力をあえて外すチームマネジメント
一度メンバーから外し、ピッチの外から仲間たちの戦いを見せることで更なる奮起を促す。名波監督の一つの手法だ。
6節の新潟戦では中村太亮をスタメンから外している。今季から加入した左SBは、最大の持ち味である攻撃力をまだ発揮できていない。名波監督は辛抱強く起用し続けたが、一列前のアダイウトンとのコンビがなかなか完成せず、逆に中村の裏のスペースを相手に使われるなど、悪循環に陥りかけていた。
そこで新潟戦では宮崎智彦を左SBで起用し、ヤマザキナビスコカップで質の高いプレーを見せていた山本康裕をボランチの一角に据えた。試合後、名波監督は独特の言い回しでこの采配の意図を説明している。
「(中村は)まだアダイウトンの“取扱説明書”を持っていないので、最初5試合で試しましたけどそんなに長い目で見すぎても彼のためにも良くない」
これだけだと、中村が指揮官に見放されたように受けとれるが、この言葉には続きがある。
「一度外から見て整理しろということ。ただ、必ずまたスタメンに戻すからという確約のもとで宮崎を使った」
主力を休ませることを名波監督は全く躊躇しない。それは、外された選手が躍起になってメンバーに返り咲こうと努力することをわかっているからであり、彼らの能力を誰よりも信じているのは名波監督自身だからだ。いずれ中村がスタメンに戻ることになれば、11人のうちの誰かは控えに回ることになるが、そこは選手間の競争だ。練習からアピールしていけば信頼を勝ち取ることも可能だ。