脆さを見せるバイエルン魅惑の翼
今季バイエルンが敗れた3試合の失点シーンを見てみると、サイドからゴールを奪われる場面が目立つ。バイエルンはサイドバックとウインガーのコンビネーションが攻撃の生命線。ベンフィカは、その“翼”の裏を突くことが突破への鍵となる。
もともとバイエルンはDFラインを高く設定しているのもそうだが、失点シーンではサイドバックが1対1で切り崩されることが多く、ドリブルで仕掛けられるとDF全体がボールウォッチャーになる傾向がある。また、ドウグラス・コスタ、フランク・リベリ、キングスレー・コマンといったウインガー陣は攻撃時こそ脅威だが守備意識は低く、速いカウンターを仕掛ければ背後のスペースを狙うことができる。
ベンフィカは1stレグで作り出したチャンスは多くはなかったが、数少ないチャンスはサイドを起点に生まれている。2ndレグでも右サイドのピッツィ、左サイドのニコラス・ガイタンが対面のフィリップ・ラームとフアン・ベルナトのサイドバックに対して積極的にドリブルを仕掛けることで、バイエルン守備陣のミスを誘発したい。
前線でコンビを組むのは国内リーグで29試合30得点の元ブラジル代表FWジョナスと27試合19得点のギリシャ代表FWコンスタンティノス・ミトログル。ポルトガルでゴールを荒稼ぎする2トップの破壊力は抜群だが、ジョナスが出場停止となるのは痛手だ。ピッツィとガイタンがサイドからミトログルへ良いボールを供給して、相棒不在の穴を埋められるか。
バイエルンとしては、守勢に回ると脆さを見せる自慢のウインガー陣が積極的に相手のサイドを押し込んで攻撃の良さを出させないようにしていきたい。それでも必ず守備に回る時間が少なからず来るので、そこでの攻防が勝負の分かれ目になりそうだ。
過去のデータを見れば、ベンフィカが突破できる確率はわずか36%。だが、実際にはベンフィカが勝ち抜ける可能性はもう少し低いかもしれない。ホームとはいえ欧州最強の呼び声高いドイツ王者に対して勝利を、それも120分戦うか2点差をつける必要がある。
絶望の淵に立たされたベンフィカだが、突破の可能性を見出すとすれば、脆さを見せるバイエルンの“魅惑の翼”を撃ち落とす他ない。どんなに美しい鳥も、翼を失えば高く飛ぶことはできないのだから。
(文:今関飛駒)
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