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コンテ就任でチェルシーはどう変わるか。鍛錬主義の“イタリア版モウリーニョ”が挑むどん底からの再出発

text by 山中忍 photo by Getty Images

クラブが求めた「闘将」。待ち受けるCLなき来季

モウリーニョ
今季途中で解任されたジョゼ・モウリーニョ前監督【写真:Getty Images】

 だが、この点をクラブ側が考慮していなかったはずはない。正監督候補には、コンテに比べれば穏健派と言えるマッシミリアーノ・アッレグリも含まれていたのだから。コンテが、5年間イタリア王者の座から遠ざかっていたユベントスをセリエA三連覇に導いた再建実積と、1年以上レッスンを続けてきた英会話力というチェルシー向きの条件を備えていたことは事実。

 しかし、敢えて厳格派に白羽の矢を立てたのは、そもそも昨季優勝後の油断があったチームには、やはり喝を入れる必要があるというフロントの理解があってのことだろう。

 前節スウォンジー戦(0-1)に文句の言えない内容で敗れたチームは、目標を失ってモチベーションが落ちた集団そのもの。しかも、待ち受けているのはCLのない来季だ。モウリーニョの鞭で受けた心の傷には、暫定指揮を任されたフース・ヒディンクという「絆創膏」で十分。トップ4返り咲きを気長に待つつもりなどないという、フロントの意思表示でもある「闘将」の招聘だ。

 その新監督に腕を振るわせるため、クラブは推定650万ポンド(10億円強)の年俸と、500万ポンド(約8億円)のCL優勝ボーナスという高待遇の他にも好環境を用意する必要がある。チーム作りに関する発言権の拡大だ。コンテは権威主義の監督としてもモウリーニョと同タイプ。今季開幕当初から窺えたモウリーニョの苛立ちは、意に反して消極的だったフロント主導の補強が原因だったはず。2年前にコンテがユベントスを去った理由の1つも同様だ。

 幸い、就任発表直後の感触は良好。コンテは発表翌日から主力数名と個別に話しをしている。意見が重視される今夏の梃入れを前に、モウリーニョの下で全力投球を止めたとさえ言われた主力の精神状態を確認する狙いもあったはずだ。

 特に不振が目立った攻撃陣で残留の資格を示したと言えるのは、ハードワークを含めて持ち味を発揮したウィリアンと、後半戦に入って本来のパス能力とプレーで周囲を引っ張る意欲を見せたセスク・ファブレガスぐらい。コンテが残留を望んでいるとされるジエゴ・コスタとエデン・アザールにしても、当人の心が移籍に揺れ続ければ売却対象とされる。

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