タイ経済の低迷によって戦略にも変化が
2社に共通しているのが、アセアン(東南アジア諸国連合)域内での売上増を戦略としていることだ。タイビバレッジは中期経営計画ビジョン2020の中で、東南アジアで最大の飲料メーカーを目指すとしている。また、同社を傘下に収めるTCCグループでは、タイ国内のカンボジアとラオスの国境付近に大型ショッピングセンターを建設している。
SCGもタイ以外での売上増を目指し、アセアン各国で積極的に工場建設などを進めており、カンボジアでは大規模なセメント工場を建設、ベトナムにも大きな投資を行っている。
日本からは意外に思われるかもしれないが、昨今、タイの経済は伸び悩んでいる。政情不安があった2014年のGDP(国内総生産)成長率は0.8%、2015年も2.8%(いずれもタイ国家経済社会開発委員会)と、かつての勢いは影を潜めている。国内需要の低迷、中国の経済減速による輸出の不振など様々な要因が影響した。
加えて、タイは出生率が1.5(2013年、世界銀行)と日本並み(同1.4)に少子化が進行しており、将来的に人口増による市場の拡大は難しい。そこで注目されているのが、タイ周辺にあるラオス、カンボジア、ベトナム、ミャンマーという、まさに今経済成長が盛んな国々だ。トヨタもこれらインドシナ半島を流れるメコン川流域国のクラブによるメコンクラブチャンピオンシップを昨年、一昨年と開催している。
今回の2チームの遠征は、上記2社のスポーツを活用した周辺国へのマーケティングでもあった。これまで外国企業からの投資や、ヨーロッパなどの強豪チームの遠征を受け入れる一方だったタイが、成長を求めて自ら国外へと打って出る立場に変化してきたのだ。
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