「がんばれ」「努力しろ」などの精神論では治らない
川原氏が日本体育協会のスポーツ診療所で週1回の内科外来で診察したときのデータによると1986年~1987年の受診者369人中オーバートレーニング症候群は91名だった。様々な理由でスポーツ診療所の門をたたくのはスポーツにはげむ高校生から実業団に所属する若い社会人の年齢層が最も多かった。すると、学校の部活動も気になるところ。先生の人数に対して生徒が多い部活動で、生徒たちの状態を把握する大変さを認めつつ川原氏は話す。
「特に身体が急激に発達する中学生や高校生は体格や体力の差が激しい。1年生には軽めにするなど配慮する必要がある。体力がなく脱落する生徒が出てきたら改善すべき点があるということです」
オーバートレーニング症候群は「がんばれ」「努力しろ」などの精神論では治らない。休息とともに練習量を調整できないと悪化する。最悪の場合ではパフォーマンスが戻らず、競技をやめるだけでなく登校拒否になったケースもあったという。
「選手たちが一生懸命がんばろうとするからおかしくなる。軽症で記録に波がでてくると、気持ちにムラがあるとか、要領よく手の抜いていると批判されるケースもありますが、選手にとってはマイナスにしかなりません」
では、保護者は何に気をつけるべきか。疲労と回復の目を向け、先にあげたように子どものコンディションに注意を払うことが重要だという。もし、自分が、または指導する選手や子どもがオーバートレーニング症候群になってしまったら――。「治療は十分できます。ただ、同じ環境でトレーニングを続けると再発の可能性が高くなる。トレーニングの内容や計画の見直しをすすめます」と川原氏は話す。
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