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権田修一や市川大祐、森崎兄弟ら。オバトレ症、どう防ぐ? うつとの関係は? 専門家に聞く

text by 山下祐司 photo by Editorial Staff , Getty Images

日本代表・市川大祐の発症

市川大祐
史上最年少の高校2年生、17歳ながらフル代表として韓国戦に先発出場した記録をもつ市川大祐【写真:Getty Images】

 ところが、回復が不十分なままのトレーニンブを続けると、疲労感はとれるが実は体の回復が追いついていない状態に陥ってしまう。疲労感と実際の体の疲労状態にズレが生じるわけだ。

 疲労感がないのに体のダメージが残っているこのときにトレーングを続けると体はダメージをさらに抱え込み、蓄積がおこる。この悪循環が進むとパフォーマンスが落ちたまま、なかなか戻らないオーバートレーニング症候群になってしまう。川原氏は説明する。

「オーバートレーニング症候群ではパフォーマンスが低下しますが、同時に回復力の低下も起きています。回復力の回復をまたずにトレーニングすると悪化の一途をたどります。普段、強度の高いトレーニングが可能なのは、身体の消耗に見合った回復力があるからです。でも回復力が戻ってこなければ、トレーニングは有害以外の何者でもありません」

 米国でははやくも1923年からオーバートレーニング症候群の報告がみられるが、日本では1980年代から。大きくクローズアップされたのは1999年だった。史上最年少の高校2年生、17歳ながらフル代表として韓国戦に先発出場した記録をもつ、当時清水エスパルスに所属していた市川大祐(現ヴァンラーレ八戸)が発症したときだ。

 その後も日本代表に選出されていた市川が同症候群にかかったことで、その名が広く知られるようになった。「オーバートレーニング症候群の診断にはいろいろな考え方があります。私は軽症も含めています」と市川の診断にも関わった川原氏は語る。

 軽症はハードトレーニングが難しいが、負荷の低い運動ならできるレベル。軽いトレーニングすら辛くなり、疲労感が残ったままで日常生活に支障が出始めるのが中等症。重症になるとトレーニングはおろか、生活がままならなくなり、入院するケースもある。治療には軽症や中等症だと数週間から3ヶ月ほど、重症になると3ヶ月から場合によっては6ヶ月以上の期間がかかる。

「診察に訪れるのは中等症状がほとんどで、重症化するケースは極めてまれです」と話す。多いときは年間40人以上を診察し、10数年にわたる経験で、重症になったのは10人に届くかどうかだったという。

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