「どんどんどんどん、チームとともに、勢いに乗って行きたい」
ブレーメン戦ではフンメルスとソクラティスを欠いて、CBはベンダーとギンターという馴染みのない2人がコンビを組んだ。しかし、敵の前半のシュート数は1本に抑えているのであれば、後半も安定した守備を続けて、シャットアウトすることは可能だったはずだ。ディフェンスの安定性は、7日のヨーロッパリーグ、リバプール戦に向けての課題と言えるだろう。
しかし本来であれば必要のない2失点は、香川のゴールの価値を高めることとなった。
香川は、77分のビッグチャンスを「決めるか決めないか」に対して、瞬間的に「今後を左右する」と感じ取った。トゥヘルの中で、ブレーメン戦における2シャドーのファーストチョイスはロイスと、ムヒタリヤンだった。依然として厳しい状況を打開するためにも、ここは決めなければいけないということを、刹那的に、本能的に感じ取ったのかもしれない。
そして、82分。CKからラモスのヘッドで、ドルトムントは試合をひっくり返す。3-2。
逆転の口火を切ったのは、香川のゴールだ。
「もちろんやはり結果が出ることは凄くいいことですし、こういう流れであったり、勢いっていうのはすごく大事にしたいので、どんどんどんどん、チームとともに、勢いに乗って行きたいと思います」
日本代表としてゴールを決めたシリア戦からの「流れ」を継続する。そんなことを意識して、香川はブレーメン戦に臨んだのだという。そしてゴールという目に見える「結果」を残して、ドルトムントでの「流れ」と「勢い」に繋げることとなった。
シュメルツァーからのクロスボールに、香川は、覚悟を込めた。
その存在を、再び証明していくために。
(取材・文:本田千尋)
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