「全然諦めていなかった。必ずいける」
集中は極限に達した。77分。左からシュメルツァーが、低い弾道のボールをゴール前に送る。
香川真司は、左足に覚悟を込めた。
「あそこで決めるか決めないか、っていうのは、すごく今後を左右すると思いました」
同点弾を叩き込む。2-2。
「いいボールが来たので、しっかりと当てることを意識して、集中して蹴り込めて良かったと思います」
香川の覚悟と集中が、逆転の口火を切る。
2016年4月2日のブンデスリーガ第28節、2位のボルシア・ドルトムントは、ホームに14位のブレーメンを迎える。
ベンチスタートだった香川は、74分に投入された。その時スコアは1-1だった。そして香川がピッチに足を踏み入れると、75分にドルトムントはユノゾビッチにゴールを許す。1-2。
残りの時間は15分で、交代直後の逆転という難しい状況にも関わらず、香川には自信めいたものがあった。
「全然諦めていなかったですし、10分、15分、時間は全然あったので、必ずいけるだろうと、そういう気持ちでずっといました」
コンディションは良い。身体にはキレがある。手を叩いて味方を鼓舞する。ピッチを縦横に動く。ペナルティエリアの中に、積極的に入る。
「必ず行ける」
香川は、「全然諦めていなかった」
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