シリア代表がバラバラになった国民の心を一つにする
シリアにはW杯出場の可能性が残されている。非常に厳しい戦いだが、選手たちは自分たちが世界の強豪と戦う姿を見せることが祖国の平和への道標になると信じてピッチに立ち続ける。
オマリは言う。「こんな状況では外国人監督を招くことなんてできない。ゆえに新しいアイディアを手に入れることは不可能だ。それでもシリアサッカー界には魂と覚悟を持ったタレントたちがいる。もちろん僕ら全員が戦争の早期終結を願っているが、今は成し遂げるべきことのために力を尽くさねばならない」。どんな困難な状況だろうと選手たちの決意は固い。
退任を表明したイブラヒム監督も母国シリアのW杯出場を信じて疑わなかった。彼らがサッカーをする理由はただ一つ「祖国の平和のため」だ。いまや内戦による犠牲者は25万人を超えたとされ、国民の半数は土地を捨てて国外へ逃げ出したとも言われる。そんな彼らの心が一つになれる数少ない機会が「サッカーシリア代表」なのだ。
そして彼らにも当然愛する者たちがいる。現在はレバノンに逃れてプレーし、代表では10番を背負うアブデルラザク・アル・フセインは「僕らはホームの観衆や友人たち、家族のみんなの前でプレーできない。また家に帰って、シリアでサッカーをする日がくることを本当に強く願っている」と溢れる思いを口にした。やはり彼らは平和な世界の実現だけを望んでいる。