自爆犯の入場を防いだ警備員
スタジアムの警備といえば、11月13日に標的となったスタッド・ド・フランスでは、自爆犯の入場を食い止めてくれた警備員がいたおかげで最悪の事態が免れた。
彼がうっかりその男をスタジアム内に入れていたとしたら、男はスタンドで自爆スイッチを入れていただろう。
この殊勲ものの警備員、サリーム・トゥーラバリー氏が先日のレキップ紙で、その日スタジアムでプレーしていたフランス代表の一人、ブレーズ・マティディとの対談という形で紹介された。その中で42歳の警備員トゥーラバリー氏は生々しく事件当時の様子を振り返った。
「この日は朝から変だったんです。15歳の娘が、『パパ、今日は特に気をつけて。昨日ドイツ代表の宿舎で爆弾騒ぎがあったらしいから』とSMSを送ってきて……」
トゥーラバリー氏はこの夜、入場ゲートの配置されていた。
そして、キックオフの40分ほど前に、他の客の背後に隠れて入ろうとしている男に気づいた。トゥーラバリー氏がチケットを見せるように言うと男は「友達が持ってくるはずだったのに来ない。でもどうしても自分は中に入りたいんだ」と主張したという。
トゥーラバリー氏はチケットがないなら入れられない、と取り合わなかった。男はその後、あたかも隙を伺うかのように彼の脇に10分ほど立っていたが、その後違うゲートからの侵入を試みた。
しかしトゥーラバリー氏はすかさず仲間に警戒するよう合図を送り、男はそこでも止められた。それで諦めたのか、男は違う男と合流してどこかへ行ってしまったのだという。
そうして試合が始まり、20分くらい経過した後、最初の爆発音が鳴った。トゥーラバリー氏は長年の経験から「爆竹にしては音が大きい」と不審に思った。続いて2発目が鳴ると、いよいよおかしいと感じたトゥーラバリー氏は、スタジアムの外をうろついていた観客を安全のため中へ誘導した。
その直後、嫌な予感は的中し、トゥーラバリー氏は足から生肉がむき出しになった怪我人を発見する。救助員の資格も持つ彼は、メディカルスタッフが到着するまで、計3人の怪我人の介抱にあたった。