化学兵器テロを想定した訓練も実施
今回のテロを受けて「過去に類を見ない規模の警備態勢になる」ことが決定したとのことだが、とくに懸念事項となっているのは、街中に設置されるパブリックビューイングなどのいわゆる“ファンゾーン”での警備だ。
こういったスペースを設けることは、少しでも多くの人たちが参加して大会を盛り上げるためにUEFAが推奨していることでもあり、フランス全土に10ヶ所、リヨンでは2~3万人、マルセイユでは8万人、パリのエッフェル塔前のシャン・ド・マルス広場では10万人規模の来場が予想されている。
200万ユーロ(約2億5000万円)を投じてビデオ監視システムを導入するほか、莫大な人数の警備員を投入するなど、一開催地あたりの出費は1700万ユーロ(約21億円)に上るというが、これはボルドーでの金額だから、パリやマルセイユならその2~3倍にはなるだろう。
しかしそれでも前述のように中止にするよりは採算がとれるのだ。
ビデオでの監視のほかに徹底するのは、ボディチェックだ。来場者は手ぶらに近い形で来ることが原則になる。
去年の夏にアメリカのデトロイトでアメフト観戦した際、スタジアムにはカバンの類は一切持ち込めなかった。自分の体以外に認められたのは、女性用の小さいポシェット(といってもスマホも入らない、リップスティックがせいぜい入るくらいの超小型サイズ)と、望遠レンズの厚みが6cm以下のカメラだけ。他に荷物がある人は有料のクロークに預けなくてはいけなかった。
警備当局は「安全優先のため、必ずしもフレンドリーな対応ができなかったとしてもご容赦願いたい」と理解を訴え、カネール大臣も「大会中は250万回のボディチェックが敢行されるだろう」と述べた。1試合、観客1人あたり2回はチェックを受ける計算だという。
この夏フランスへユーロ観戦に来る予定のある方は、ファンゾーンや会場にはなるべく手ぶら、さらにたっぷり時間の余裕をみること、を記憶にとどめておくと良さそうだ。
ファンゾーン以外の、スタジアムや選手の宿泊施設などの警備はUEFAの管轄で、11月のテロ後は7%の増員を決めて1万人が警備に当たる。6月の本番までには、警備の模擬訓練が各地で行われる予定で、3月18日には、南仏のニームで化学兵器テロを想定した本番さながらの訓練が行われた。
観衆役として2000人が集められ、『バーン!』という爆発音を合図に観衆役が悲鳴をあげながら逃げ惑う中、警備員、メディカルスタッフらがそれぞれの動きを確認。
参加者の話によると、ガスを浴びたと思われる人物には、まず服を脱がせて熱いシャワーを3分浴びせ、症状に応じて患者を整理……等々、かなりリアルな処置が行われたそうだ。