“時間稼ぎ”は日本のリズムを壊す狙いも
そうしたシリアとの戦い方の中でハリルホジッチ監督が警戒するのはGKアルマの“時間稼ぎ”だ。
前半26分にFKから香川真司のキックをファーで酒井高徳が折り返し、原口のシュートがブロックされたこぼれ球を本田が狙ったが、惜しくもゴール右に外れた。その時に横っ跳びでセーブに行ったアルマは左足をつったというジェスチャーで倒れ込み、ゲームを止めたのだ。
その数分後には右CKを本田が蹴り、直接処理に行ったアルマが槙野と少し接触しただけで再び倒れ込んだ。その時はさすがに主審の注意を受けていたが。
ルール上GKが負傷した場合は試合を中断することになる。それが“演技”であるならば、早い時間帯のこうした行為は単純に時計を進めるよりも、相手のリズムになりかかったところで試合を切り、流れをシリアに引き寄せようという狙いがあるはずだ。
日本のGK西川は「ゴールキックの時にわざとゆっくりしたり、自分たちのリズムを壊そうとしてくる場面は自分たちも見てイメージはしているので、そういった時でもやっぱり慌てずやること」と語る。
逆に自分がボールを持った時、ゴールキックになった時は早くリスタートして、攻撃のスイッチを入れることを意識しているようだ。
ホームの日本にとって大事なのは相手の挑発に乗らず、時間稼ぎをされても冷静にプレーのクオリティを維持していくことだ。
ファウルすれすれのコンタクトに対しても、高い集中力とプレーの正確性で回避できる部分はあるが、いざ当たる時に怯まないことも重要になる。またハリルホジッチ監督が要求するピッチ内での選手間のコミュニケーションも、シリアのような相手との試合では流れを左右してくるはずだ。
どれだけ相手の罠にはまらず、クオリティの高いサッカーの試合に引き込めるか。レフェリングの癖を早めに把握することも必要になるが、90分での状況判断や冷静さ、選手間での意識の共有が求められる試合になる。
(取材・文:河治良幸)
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