シリア代表に声援を送るサポーター【写真:Getty Images】
シリア代表のファジャ・イブラヒム監督は28日、ロシアW杯アジア2次予選の日本戦を前にした記者会見に臨んだ。
国内は内戦状態で混沌としており、サッカーどころではない。政府と反体制派の対立は激化する一方で、過激派組織IS(Islamic Stateの略)の脅威も無視できない。しかしイブラヒム監督はスポーツの持つ力を信じている。
「私たちは国民をハッピーにしたい。それこそがモチベーションになっている。シリアは文明があり、歴史がある国です。それが今、病んでしまっています。しかし病んでいるからといって決して死に絶えることはない。唯一のメッセージとしてはとにかく人々をハッピーにしたいということ」と述べた。
シリアも日本と同じくアジア最終予選進出が決定的だ。イブラヒム監督は「いい世代の選手が揃っていると確信している」と述べ、国民のヒーローたりえる選手達への信頼を強調する。そのうえでW杯出場が希望と幸せをもたらせると考えている。
もちろんこれまでW杯出場経験のないシリアにとって、困難なミッションであることに間違いはない。それでも「私のチームの今の資質には全幅の信頼を置いている。選手たちもやる気に満ちているので、必ずやり遂げられると思っている」と、強い思いを口にした。
イブラヒム監督率いるシリア代表は希望になれるだろうか。多くの国民は戦火を逃れて難民として欧州方面へ脱出し、いまや国際問題にまで発展している。代表チームという誇り高き存在の活躍は、国や自分たちの土地を失った彼らの象徴となり、幸せをもたらせる可能性を秘めている。
(取材:植田路生)
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