ミハイロビッチ監督も本田の疲労を懸念
実際のところ、後半になってもこの動きをサボった様子はなかったのである。象徴的だったのは、後半11分のプレーだ。ラツィオの左SBエドホン・ブラーフハイトに体を寄せられながら、右サイドへ流れていたルイス・アドリアーノへパスを出す。その後ルイス・アドリアーノは縦に突破を仕掛けたのち前線へパスを出すが、そこにいたカルロス・バッカの背後にはもう本田が詰めていたのである。
それに加え、ウイングとして縦の突破にもチャレンジ。相手のプレッシャーがきつい中で、本田はこうしたプレーをずっと続けている。これをサボると、チームが機能しなくなるからである。しかし毎試合のようにこんなインテンシティの高いプレーを続け、しかも交代もなければ、いつかはスタミナが切れる。実際この日のミスは、走り終えた後でボールを貰い、ゴールに近づいた時に頻発していたものだ。
攻撃面でのキレを残したいのなら、動きの量を減らせばいい。しかしそうすると、チームが機能しなくなる。現在の戦力ではアウトサイドにバランスを取ってもらわなければ成り立たず、しかも交代要員もいない。そこにジレンマがある。
ここでリーグ戦は、代表ウイークのために中断期間を迎える。だがミランにとって厄介なのは、リフレッシュが必要なボナベントゥーラはイタリア代表に、そして本田は日本代表に招集されるということだ。
もちろんミランの都合ばかり考えるわけにはいかないのだが、クラブにとっては心配事になるのは間違いない。ミハイロビッチ監督は会見中「本田って代表に招集されたんだっけか?」と、臨席した広報担当者に2度にわたって確認。そして「疲れないで帰ってくることを望む。さもなければヤバいことになっちまう」と俗語を交えて笑わせていたが、内心気が気ではないように見て取れた。
(取材、文:神尾光臣)
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