厳しい現実にも歩みを止めない香川
引いて受ける。足元で受ける。しかし次に繋がらず、なかなかリズムを掴めない。もちろん、それは香川だけの問題ではない。バイエルンのような欧州を主戦場とするチームでも、引いた相手には、どうしても苦しむ。
手で受け取るように、足でボールをしっかりと掴むことは不可能だ。プレスが激しい狭いエリアで、寸分の狂いもなくトラップし続けることのできる人間はいない。いたとしたら、それはロボットだ。
また香川が動きを工夫した前半に、チームとしてボールを回したことが、ボディ・ブローのように効いて、アウクスブルクの体力を奪っていったという側面もあるだろう。
それでも、後半が始まって10分も経たない内での交代では、不完全燃焼である。対アウクスブルク戦で香川は、後半戦に入ってから苦しむ状況を変えようと、必死で動いた。しかし、トゥヘルを納得させるだけのパフォーマンスを残すことは、出来なかった。
だからと言って、香川は歩みを止めないだろう。現実の難しさは、置かれた本人が誰よりも良く分かる。
「そう甘くはないのでね」
前半戦のBVBのサッカーは、指揮官の中で、もはや過去のものとなった。トゥヘルもまた、歩みを止めない。
3歩進んで、2歩下がったとしても、今は、前を向くしかない。
(取材、文:本田千尋)
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