ベトナムに日本人選手が少ない理由
今季のベトナムプロサッカーリーグ(Vリーグ1)で日本人MF井手口正昭(27歳)が躍動している。井手口と聞いて、ガンバ大阪所属のU-23日本代表MF井手口陽介(19歳)を思い出すファンは多いだろうが、井手口正昭はその兄だ。今オフに横浜FCからベトナム屈指の人気クラブであるホアン・アイン・ザライ(HAGL)に移籍してきた。
横浜FCとHAGLは昨年末にパートナーシップを締結しており、選手間交流という形で、「ベトナムのピルロ」ことU-23ベトナム代表MFグエン・トゥアン・アイン(20歳)が横浜FCに1年間の期限付き移籍。一方の横浜FCからは井手口が完全移籍でHAGLに加入した。
当初は、多くのメディアがこの移籍をビジネス目的と考えており、戦力的には期待できないと報じていた。東南アジアで活躍する日本人選手はタイをはじめとして大勢いるが、ここベトナムで外国人選手に求められるのはなによりフィジカル。特に高さだ(井手口は173cm)。その証拠にリーグには190cm台の外国人センターフォワードやセンターバックがごろごろいる。
それに加えて、ベトナムでは外国人枠の少なさも日本人をはじめとするアジア人が移籍しにくい理由となっている。外国人枠は2015シーズンから削減されて1部で2人、2部以下は0人。タイなどで採用されているアジア枠も存在しない。必然的に各クラブの補強ポイントは、センターラインということになり、比較的安価で大柄なアフリカ系の選手が大半を占めることになる。
実際にクラブ関係者にコンタクトをとってみると強化担当者は、技術があり、プロ意識が高いという理由で日本人選手に関心を示すのだが、最終的な決定権を持つ肝心の監督やテクニカルディレクター(TD)がアジア人助っ人を軽視しており、これまで移籍が実現してこなかった。
過去に日本人が在籍した例でいうと、「アジアの渡り鳥」こと伊藤壇が2003年に当時1部のカン・サイゴン(サイゴン・ポート)でプレー。その後、当時2部のホーチミン市郵便局クラブに新居秀元がいたが、長く活躍することは出来なかった。