早朝の眠気と寒さを忘れさせてくれる熱戦
前半の45分間で10本だったバイエルンのクロス本数は、後半の45分間で24本を数えていた。
ポゼッション、3バック、0バック、可変式システムなど様々な戦術を生み出してきたグアルディオラのバイエルンだが、この一戦のような紙一重の接戦ではサイドを突破してのクロスというサッカーの歴史で長く続くシンプルな攻撃を繰り出す。このふり幅の広さが強さの要因なのかもしれない。
ユベントスは後がない前半の45分間では得点を奪うためのカウンターという、“攻撃的な守備意識”を持っていたため鋭さを発揮できていたが、後半に入るとやはり引いてしまったため延長戦で再び鋭さを出すことが困難な状況となってしまった。
結果、108分にはカウンターの流れからチアゴ、110分には再びカウンターからコマンが自ら決めて4-2。バイエルンがラウンド16中最もハイレベルな激戦を制して駒を進めた。
前半の45分間、アッレグリの的確な戦術プランでリードを奪ったユベントスだが、勝ち抜けるためには90分で決着をつけなければならなかった。そして、グアルディオラの選手交代による戦術変更がそれを阻止した結果となった。
選手の身体能力、技術、戦術理解、そして監督のゲームプラン、采配が高いレベルで激突し合う“現代サッカー”を象徴する激戦は、早朝の眠気と寒さを忘れさせてくれる熱戦となった。
(文:海老沢純一)
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