鮮烈なプロデビューがもたらした重い十字架
デビュー当時の衝撃があまりにも強烈すぎたからか。枕詞となった「怪童」あるいは「怪物」は、いつしか森本にとって重い十字架と化した。
5月には28歳となり、デビューから干支がひと回りする。自らの立ち位置は年齢的に中堅にさしかかり、ベテランと呼ばれる日も迫りつつある現状が如実に物語っている。
「ずっとそういう目(最年少記録保持者)で見られてきた部分はありますけど、普通にプレーすれば能力は高いわけですから。ヨーロッパで長くプレーしてきたことで、戦う姿勢やハングリーな部分ももちあわせている。
もう一度しっかりと体を作って上手くチームに合わせて、チームもまた彼のよさを引き出せていければ、そういう(日本代表復帰の)チャンスも絶対に生まれると期待しています」
前出の関係者が森本の心中を慮りながらエールを送れば、頼れる背中を見せる大久保はあえて厳しい檄を飛ばす。
「いまのところは体を張って、ディフェンスでも頑張っている。でも、アイツはもっとがむしゃらにやれると思うし、やらないとダメでしょう」
復活という言葉はあてはまらない。あえて表現するならば覚醒。ストライカーの象徴となる「9」番を託されたフロンターレで、異国の地でプレーしながら追い求めてきた独自の点取り屋像を確立させたい。
「(ゴールを決めれば)もう何でもいいです、何でも」
自らに課したノルマは10ゴール以上。年齢的にもラストチャンスととらえているのか。名古屋グランパスを再びホームに迎える12日の次節以降の戦いへ向けた短い言葉のなかに、新天地フロンターレにかける森本の決意が凝縮されていた。
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