求められる応用力と判断力
この数秒の流れでクロスを含め7本のパスがわずか10回のタッチで行われたことになるが、気になった人もいるかもしれない。左ボランチの柏木(白)はどこにいたのか。実は最初に遠藤康(赤)が右に流れたところに付いていったのだが、ワイドに流れすぎてしまった。
そこから中央に戻ろうとしたものの、赤組の素早い展開に対し、一時的にゾーンの枠から外れてしまった。そこを素早く埋めた遠藤航(白)に合わせてボランチの位置に武藤(白)が落ちてバランスを取ったわけだが、この時点でゾーンプレスの形が崩れていた。
この流れからすれば遠藤航(白)と武藤(白)は無理に柴崎(赤)を挟みに行かず、1人は柴崎(赤)の縦を切るべきだったかもしれない。ただ、こうしたゾーンプレスの原則と応用を刹那の流れで的確に判断するにはやはり何度も繰り返して習熟する必要がある。
ここで抽出したシーンは一局面に過ぎず、18分間の中で、こうした攻防が連続的に繰り返されていた。実際の試合では時間帯や状況によって、無理をせずペースを落とす冷静さも求められるが、今回はゲーム形式での基本的な意識付けの練習。攻撃側は1タッチ&2タッチをベースに縦を狙い、守備側はコンパクトな組織でゾーンプレスを実行することに集中していた。
こうした意識付けによって、代表合宿に参加した選手の技術と判断力のポテンシャルが証明された形だが、所属クラブの基本スタイルがある中で、選手たちがいかに代表レベルのプレーを出していけるか。ここからJリーグで示されるパフォーマンスが欧州組を含めた正式な代表メンバーの選考につながってくる。
【了】