短いシーンで見えた攻撃の意図

　赤組が攻撃側になっている場面。右ウィングを担う齋藤（赤）が同サイドに流れてきた遠藤康（赤）からボールを受けると、宇佐美（白）がほぼ真横からプレッシャーをかける。その斜め後ろに遠藤航（白）が等間隔でポジションを取り、2人で齋藤（赤）を挟む形を取った。

　齋藤（赤）が右SBの塩谷（赤）にバックパスすると、ゾーンプレスの原則通りに宇佐美（白）が塩谷（赤）のチェックに向かったが、見事だったのは塩谷（赤）からのコンビプレーだ。

　その受け手となったのはボランチの柴崎（赤）。塩谷（赤）から斜めのパスが来ると、敵チーム（白）の遠藤航と武藤の“浦和コンビ”が中央で挟みに来たが、柴崎（赤）は怯むことなく1タッチで2人の合間から1トップの興梠（赤）に縦パスを通した。“門を通す”と言われるが、積極的にボールを奪いにきた遠藤航（白）と武藤（白）をむしろ利用するような柴崎（赤）のパスだった。

　短い時間で的確な場所に動き、柴崎（赤）の縦パスを引き出した興梠（赤）には左CBの丸山（白）が厳しくチェック。そこに柴崎（赤）と武藤（白）が争うようにアプローチしてきたが、振り向きながらも粘り体勢を立て直した興梠（赤）が前方の遠藤康（赤）に縦パスを通した。

　このシーンの最初で右に流れていた遠藤康（赤）は中央に戻っていたのだが、丸山（白）が興梠（赤）のチェックに行ったことで、CB植田（白）と左SB車屋（白）の間に生じたスペースを逃さず、柴崎（赤）のパスを引き出したのだ。

　そこから遠藤康（赤）は車屋（白）が絞って対応したことにより外でフリーになった齋藤（赤）に右足の1タッチで展開。そのまま素早くクロスを上げ、興梠（赤）が合わせに行いった。結果的には植田（白）のヘッドに跳ね返されセカンドボールとなったが、意図が見える攻撃だった。