選考委員による最終選考を終えての総評
<最終選考を終えての総評>
選考委員長:佐山一郎氏(作家/編集者)
ワールドカップ本大会翌年ということもあってなのか、正直なところ点数部数ともにふるわぬ一年でした。ラグビー界の復活がまぶしかった本年度を総括するにあたり、賞自体の性格づけも難しくなって来ています。基本線としては従来通りエイジレスのままですが、横一線で評価が割れたような場合は、より若い著者を優先するというのが今回交わした議論の結果です。
翻訳大賞は『PK』が満票で選出されました。受賞した和書の輸出と双方向性の獲得もまた実現させなくてはならない喫緊の課題です。主催元(カンゼン)からの刊行ですが、蛇足ながら情実は今回も一切介在させていません。
若手の台頭と書き手の裾野の形成の一助となることをめざす本賞はまだほんの3度目。引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますよう衷心よりお願い申し上げます。
選考委員:幅允孝氏(ブックディレクター)
サッカーを語りながらビジネスを語る、マネジメントを語るというような、サッカーファン以外の人に届けようとする作品が多く、逆にサッカーの読み物というのが少なかった印象だが、『ラストピース』はその中でも記録性とエンタメ性を融合させた読ませる作品だった。どんどん新しい本が出て、読み捨てられるようになるなか、今だけでなく数年後も読みたくなるような本がもっと多く世に出て欲しいと期待しています。
選考委員:大武ユキ氏(漫画家)
翻訳本は常に一定のクオリティでもって出版されているように感じるが、和書は決め手にかける一年だった。世間的な興味が出版界にも直結しているということの表れだろうか。
※優秀作品に選出されていました『オシム 終わりなき闘い』は、著者・木村元彦氏より下記理由で辞退の申し出がありました。よって、大賞選考の対象外とさせていただきました。
「第3回の本賞にノミネートしていただいた事は誠に光栄でありがたいのですが、辞退を申し上げます。理由はいくつかありますが、僭越ながらスポーツノンフィクションの賞はすでにいただいており、議論の枠を若い人に譲りたいこと。また本作はNHKのドキュメンタリーとしての仕事が先にあり、膨大なリサーチ量もNHKスペシャルという番組の恩恵によっています。自費で取材をする他のフリーの書き手とのコンペにしてはフェアではないとも思います。読者投票も始まっているとのこと、一刻も早いほうが良いと思い、ここにリリースさせていただきます」
授賞式の様子などは追ってまたレポートいたします。
サッカー本大賞実行委員会
【了】