代表のビジョンに合致する特性。ハリルも期待
小林の特徴が最も良く表れたのは湘南戦でチーム2点目となったゴールシーンだ。
ハーフウェーの位置で湘南CBバイーアを背負いながら手前にボールを叩くと、ボランチの大島僚太がサイドチェンジ気味のロングパスを左ワイドの大久保嘉人に送る間に、中央に密集する湘南ディフェンスの外側から裏に抜け出し、スルーパスから1対1で飛び出してくるGKの脇を破るシュートでゴールネットを揺らしたのだ。
より具体的に説明するならば、大島のパスが出た瞬間、湘南の選手たちがボールの方向に目をやっていた。小林はその瞬間を逃さず、左ウィングバックを担う菊池大介の外を突いた。風間八宏監督が良く「相手の背中を取る」と表現する動きだが、あらゆる状況でチャンスを逃さないためのイメージをし続けている小林らしいゴールだった。
1タッチ、2タッチを基本とした縦に速い攻撃を掲げる現在の日本代表はそこにこだわると単調になりがちな部分があり、リズムやペースの変化が必要と良く指摘される。その一面も確かにあるかもしれないが、目指す方向性の中でパスの出し手と受け手の動きが合えば、危険なフィニッシュに持ち込めていた場面も少なくない。
ハリルホジッチ監督の言う“オブリックランニング”(くの字を描く様な斜めの動きを入れながらディフェンスの裏に抜け出す走り)に関して、小林は代表の常連メンバーに勝るとも劣らない意識とビジョンを持っている。
アギーレジャパンでも「味方のいいパスを引き出す動きを意識したい」と語っていた小林は当時からさらに質を高めた感がある。だからこそハリルホジッチ監督も28歳というすでに若くはないFWに対する期待を持ち続けているのだろう。
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