香川のような選手は今のドルトムントにはいない
トゥヘルは会見で「非常に心が痛んだ」と述べている。この言葉を額面通りに捉えれば、バイエルン戦で香川を外すことは、トゥヘルにとっても苦渋の決断だったようだ。
もっとも、後半戦に入ってからドルトムントのサッカーの質が変わったこともあって、なかなか香川は、自他ともに満足のいくパフォーマンスを見せることが出来ていない。前半戦に主に務めたインサイドハーフと違って、特に2月の終わりに掛けてツー・シャドウのような形を取るトップ下で出場し、悪戦苦闘している。
しかし最も重要なことは、バイエルン戦で外された理由は、選手としての“優劣の問題”ではなく、“差異の問題”である、ということだ。トゥヘルが香川のことを「10番タイプ」と言及したように、選手を個別に見た場合の“違いの問題”で、香川はベンチ外となった。
裏を返すと、現在ドルトムントに「10番タイプ」は香川ぐらいしか見当たらない、ということでもある。狭いバイタルエリアでボールを受け、わずかながらも時間を創り出し、局面を打開する。
ドルトムントの選手達の中で、細やかな技術と知性が必要とされるトップ下の適任者は、まさに香川だ。戦術を特化したバイエルン戦で外したことと、「10番タイプ」と言及したことを踏まえれば、トゥヘルはそうした適性を香川に見ている、ということになる。
2月18日のヨーロッパリーグ(EL)ポルト戦でわずかに片鱗は見せたが、前半戦ともまた違うトゥヘルの要求に、現在香川は応じ切れていない、といったところだろうか。
10日にはELラウンド16、トッテナム戦が控え、また来月にはシャルケとのダービーや、ヘルタ・ベルリンとのDFBポカール準決勝と、重要な試合はまだまだ残されている。
バイエルン戦ではベンチ外となったが、さらなる奮起が求められる。前半戦とは違うポジションでのポテンシャルの発揮が、香川には期待されるところだ。
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