尊重されるべき本田の決断
現在の本田が献身的な守備と、サイド攻撃成立のためのプレーで信頼を高めたことは、これまでお伝えしてきた通りである。攻守両面において様々なタスクをこなす彼は、左のジャコモ・ボナベントゥーラとともに代えの利かない存在となっている。それは1日のコッパ・イタリア準決勝アレッサンドリア戦第2戦でフル出場させられたことからも示されている。
本来、攻撃での存在感を追求するべき立場として、守備に徹するのは試合に出るための妥協、という見方も出来るかもしれない。だが本田が現在の戦術上のタスクを放棄し点を取りに向かった場合、今のミランは間違いなく瓦解するだろう。チームプレーの重要性を理解し、今の立場を受け入れて全力でプレーをするという決断も、また尊重されるべきものなのだ。
次のサッスオーロ戦では、まさにそのあたりの出来が勝敗を分けると言っても良い。前半戦での対決でミランは勝つには勝ったものの、退場者が出て10人となった相手に中盤を圧倒された。
当時、4-3-3の右ウイングで使われていたのはアレッシオ・チェルチ(現ジェノア)。突破で先制点につながるPKは取ったものの、守備にはまるで関心を払わなかったためサイドや中盤の数的不利を招いた。今思えば、チェルチが評価を落とした遠因はこういうところにあったのだろう。
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