ドイツサッカーにとって良いゲームだった
両チームとも似たような布陣でゲームに挑んだが、中盤のディフェンスには違いがあった。バイエルンは、ギュンドアンとバイグルに、ミュラーとビダルがマンマークで付く。対するドルトムントはゾーンで守る。よって、ミュラーとビダルが、どこか浮いてしまうところがあった。
DFラインと2列目の間でミュラーはボールを受けてリズムを作る。また、サイドに流れてボールを回して、チャンスを演出した。
56分、ミュラーの右サイドからのクロスに、ビダルが飛び込んで頭で合わせるが、ゴールの右に外れる。ビダルもまた、中盤のスペースで受けて展開した。そうしてバイエルンが「後半はゲームを上手くコントロールした」。
キミッヒを中心に、ドルトムント陣内でボールを繋いでいく。75分を過ぎる頃には、BVBは5-4-1で守るが、なかなか攻撃に移ることができない。
トゥヘルは守備を重視する戦術を選択したが、「極めて高いレベル」のバイエルンに対してドローで十分と捉え、勝利は二の次だったのだろうか。トゥヘルのバイエルン戦に対する意思を象徴するのが、81分の交代と言えそうだ。
ロイスに代わったラモスは左サイドに入った。つまりトゥヘルは、カウンターを仕掛けた時に、対面する170cmのラームと185cmのラモスの身長差を利用して、バイエルンのゴールを陥れようと考えたようだ。
80分に、ムヒタリヤンのパスに右サイドを抜け出したオーバメヤンが、折り返したボールを、ラモスがヘディングでシュートを打つ。左に外れたが、相手の力を認めた上で守勢に回りながら、それでいて一瞬の隙を伺い続けようとする、トゥヘルの執念が現れていた。
バイエルンとの首位決戦は、0-0のドローで終わった。しかしペップが「ドイツサッカーにとって良いゲームだった」と振り返るように、トゥヘルの戦術は守備に傾きながらも、バイエルンのクオリティと相まって、高い次元のゲームを産み出したのは、間違いなかった。
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