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アジア 9年前

“日本の天敵”ケーヒルは“金の亡者”なのか? 母国の“英雄”に豪州人が抱く両義的な感情

text by 植松久隆 photo by Hisataka Uematsu, Getty Images

自国のスターに苦言を呈した豪州連盟重役

FFAのデイビッド・ギャロップCEO
FFAのデイビッド・ギャロップCEO【写真:Getty Images】

 そんな豪州のファン心理を期せずして代弁する形になったのが、豪州サッカー連盟(FFA)のチーフエグゼクティブのデイビッド・ギャロップだ。彼は会見に先立って、ケーヒルが「FFAにはヴィジョンが無い」などと辛辣な発言をしたことに怒っていた。

 そして会見では「FFAは、ティムとその代理人に上海退団のニュースを聞いてからすぐにコンタクトした。いくつかの(Aリーグ)クラブや私個人としても直ちに連絡をいれた。しかし、すぐに我々は思い知らされた。彼らの要求にはとても応えることができないし、Aリーグは彼にとってオプションの一つではないということを」とチクリ。

 FFAとAリーグにしてみれば、ケーヒルのMLS在籍時にシドニーFCが積極的にアプローチしたものの、高額な要求を前にオファーすらできなかった過去もあってか、自国の代表のエースに対しては複雑な感情がある。そこに来てのFFA批判だから、ギャロップとしても黙ってはいられなかったのだろう。

 それに対して、ケーヒルは「私について、言われたり書かれたりしていることにとても傷ついている。その中でも一番傷ついたのは、FFAが私の“要求”を満たせないという(ギャロップの)示唆だ。これは事実ではない。私はそんなことは一言も言っていない。(上海申花との)契約が破棄されて以降、私はFFAの誰とも契約のことやお金のことで話をしていない」と反論する。

 ここで、このどちらが真実を語っているのかを詳らかにする必要は感じない。実際のところ、ケーヒルのAリーグ復帰の見込みは薄い。

 彼自身、移籍ウィンドーの閉まっていた今回の有効なオプションとして考えられたゲスト・プレーヤー制度(筆者注:サラリーキャップ制の枠外で最大14週プレーすることが認められる)に関しては、「この制度は様々な不利益を生じさせる。きちんとした計画や意図を持たずに帰国してAリーグでプレーするのは混乱を引き起こすだけ」とかなり否定的。

 次の移籍ウィンドーでの祖国復帰も微妙だ。現在のケーヒル側の高額要求と、今回の“ケーヒル対ギャロップ”の丁々発止を見ると、Aリーグで彼の雄姿を見られるチャンスはまた少し遠のいたと言わざるを得ない。

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