「質問は一人一つだけだ」
次の日、大量得点でコルドバを破り、FCバルセロナはクリスマス休暇に入った。試合後の記者会見で、記者は彼にレアル・マドリーとセルタ戦の敗戦、ヘタフェ戦の引き分けでネガティブな雰囲気があったかについて質問をした。
「ネガティブな雰囲気は感じなかったし、ネガティブなデータは見せられたが、ポジティブな面しか見なかった。良い部分に集中して、何を改善しなければならないかを知るためにチームのポジティブなデータを参考とした。考えたのはブロックを強固にすること。あとは、君たちの好きな様に解釈してくれればいい」
アノエタで広報担当責任者のホセ・マヌエル・ラサロはレアル・ソシエダに負けた後の記者会見を仕切り、そこで記者たちに名前と所属を言うこと、質問は一つだけにするようにと注意した。あるラジオの記者が2つ目の質問をした時、ルイス・エンリケは頑固で、鋭い一面を披露した。
「質問は一人一つだけだ。最初の質問に答えようか、それとも2番目、またはその中間?」
質問には一つだけ答えた。もちろん、ルールを破ることはできないし、ラサロに恥をかかせるわけにもいかない。他に良いやり方があったかもしれないし、彼の言い方は適切なものではなかった。もし私がその記者であれば、2つの質問の“中間”の答えを求めていただろう。
FCバルセロナの監督としての彼の態度は新しいものではなく、驚きではなかった。ルイス・エンリケとメディアとの関係を多少でも知っている者たちは、これが何も新しいニュースではなく、19歳の時からクラブ、町を替える度に繰り返されていたものだと理解していた。
アストゥリアス出身の監督は記者たちを敵とみなし、彼らとの関係は修復不可能だと考えていた。また、彼自身のキャラクターが大きく影響し、メディア受けする人間ではなかった。(続きは『ルイス・エンリケ 最適解を導き出す信念と信頼のリーダーシップ』でお楽しみください)