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トッテナムはなぜ好調か。トップ6候補から優勝候補へ。“栄光のクラブ”が目指すは55年ぶりのプレミア制覇

text by 山中忍 photo by Getty Images

躍進を支える、監督の三大基本原則

ハリー・ケイン
エースのハリー・ケイン【写真:Getty Images】

 まずは攻撃意欲旺盛な指揮官のバランス意識改善だ。就任1年目の昨季は、得点差や時間帯とは無関係に両SBに攻め上がれと叫ぶ印象が強かったが、例えば優勝候補として名乗りを上げた26節マンチェスター・シティ戦(2-1)では、攻撃参加は主に左SBのダニー・ローズに任せていた。逆サイドはカイル・ウォーカー。ローズと同じ25歳で同じく攻撃好きなウォーカーが見せたハンドブレーキの効いたパフォーマンスは指揮官の指示によるものだろう。

 最終ラインの手前ではエリック・ダイアーのボランチ起用も奏功している。開幕当初、CB兼SBのコンバートはメディアで疑問視されたが、シーズンも折り返し地点に差し掛かる頃には「前半戦のチーム内MVP」とさえ言われるようになっていた。

 ムサ・デンベレを2ボランチの一角で先発させる機会が増えた判断も同様。MF陣にデル・アリというダイナミックな攻撃力が台頭したこともあるのだろうが、かつてはドリブル突破やキラーパスを狙ってボールを失う場面が目についた技巧派MFは、自慢の「足下」を中盤に安定感をもたらす仕事に生かすようになっている。

 かといって、ハイライン、ランニング、プレッシングというポチェティーノ体制の三大基本原則が曲げられたわけではない。前述のシティ戦でも、4人がかりのボール奪取をきっかけに終盤の決勝点が生まれた。そもそも残り15分で格上に追いつかれたアウェイゲームで、引き分けには逃げない強気な姿勢があったからこその勝利だ。

 攻撃陣では、22歳のハリー・ケインがエース扱い2年目に「本物」と認められた。トッテナムでの今季初得点は9月に持ち越されたが、ネットを揺らせなかった間も勢力的かつ献身的な動きでチームの攻撃に貢献。10節ボーンマス戦(5-1)でのハットトリックで吹っ切れた後は28節終了時点で16得点と、プレミアでの2年連続20得点台が濃厚だ。

 頼れる1トップがケインのみのCF事情は相変わらずだが、22節からの6連勝では計15得点中10点を、2得点ずつのクリスティアン・エリクセンとアリをはじめとするケイン以外の6選手が記録。得点者に多様化の傾向が見られる。

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