新たな役割が引き出す“天才”の可能性
4年契約でバーゼルへ完全移籍する前から、小学生時代からユニフォームに袖を通してきたセレッソへの愛を公言してきた。遠くスイスでプレーした1年半の間に、古巣への思いはますます増幅したのだろう。
1000万ユーロ(約13億5000万円)で設定されていた違約金が驚くほどの金額に減額されたのも、玉田社長によれば「曜一朗の(復帰への)思いが強いということを、最後はバーゼル側が理解してくれた」ことに尽きるという。
2シーズン目を迎えたバーゼルで出場機会を失い、チームの構想からも外れかけていた矢先に届いたセレッソからの予期せぬオファー。さまざまな状況が重なり合ったなかで、柿谷が思い描くベクトルはセレッソの未来に向けられている。
「いい試合をしたけど負けた、では絶対にダメ。僕たちは何があっても、どんな形であっても勝ってJ1へ戻り、そこで強いセレッソを作っていくために一緒になって戦っていかないといけない」
トータルで42試合を戦う長丁場のJ2戦線を勝ち抜くために、大熊監督は「試合で使わなければチームにもフィットしない」という考えのもと、サントスを含めた新戦力を当面は辛抱強く起用していく方針だ。
必然的に柿谷がサイドに回る機会も増える。もっとも、ワントップやトップ下に適性があるのは、あくまでも現時点での話。柿谷の献身的な姿勢と潜在的なセンスは未来も変えると、指揮官はこう続ける。
「守備ができるようになり、そのうえで強力な2トップがいれば、サイドのプレーヤーとしての幅も広がってくる。ゼルビア戦の前半などはボールが頭上を越えることが多く、確かに攻撃で曜一朗の出番がなかったけれども、そういう献身的な姿勢というものはいろいろな意味で後につながってくる。日本代表とかね」