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Jリーグ 9年前

帰ってきた桜の背番号「8」。新主将就任と2列目サイド起用が引き出す柿谷曜一朗の潜在能力

text by 藤江直人 photo by Getty Images

機能しなかった前半も失敗ではない

セレッソ大阪の大熊清監督
セレッソ大阪の大熊清監督【写真:Getty Images】

 トップ下に回った後半の柿谷は見違えるようにボールに絡み始め、相手を引きつけてから味方を生かすパスも供給した。柿谷自身、恐縮しながら前後半の変化を振り返る。

「右にいるよりは全体的にサポートへいけるので、後半のほうがボールに触る回数は多くなりました。前半に関しては(対面となる)相手の左サイドがすごく脅威で、攻め上がるよりも守備に追いやられる時間のほうが長かった。

 僕が守備を苦手にしている分だけ、(右サイドバックの松田)陸には本当に感謝している。あれだけ頑張ってくれて、声もかけ続けてくれて。そういう関係がチームとして大事だとあらためて思いましたし、僕自身も試合で悪かった部分を練習で修正して、自分たちの武器に変えていきたい」

 結果として機能しなかったゼルビア戦の前半だが、大熊監督は失敗だったとは思っていない。むしろ、キャンプから抱いてきた柿谷に対する思いが確信に変わった点で、大きな収穫があったと力を込める。

「曜一朗にはエゴになってほしいと思っていたけど、オレが、オレがとはならずに、ちゃんと周囲も使うプレーもできていた。曜一朗がチームのためのプレーに徹して、彼のアシストからゴールが生まれれば、ちょっと時間はかかるかもしれないけど、ゴールもまた彼のところに返ってくるんじゃないかな。

 言動でも周囲に気を使っていたのがわかるし、プレーそのものも非常に献身的だった。素晴らしかったよね。今日の試合に関していえば、曜一朗とゴールキーパーのキム・ジンヒョンが攻守に効いていた」

 大熊監督がセレッソ入りしたのは2014年12月。強化部長としてJ2降格を喫したチームの立て直しに奔走し、昨シーズンの残り1試合という段階で、パウロ・アウトゥオリ前監督に代わって指揮を執った。

 4位で進出したJ1昇格プレーオフは、決勝でアビスパ福岡と引き分けたことで1シーズンでのJ1復帰を逃した。引き続き今シーズンの指揮を執る過程で、柿谷と初めて同じ時間を共有してきた。

「僕はいま現在の曜一朗しか知らないし、見てもいないのでこれが当たり前だと思っているけど、前からチームにいる者のなかには驚いているのもいますよね」

 練習への遅刻を繰り返し、当時のレヴィー・クルピ監督の逆鱗に触れたのが2009年6月。期限付き移籍した徳島ヴォルティスで約2年半にわたって武者修行を積んだこともある悪童が、いまやチームと仲間、何よりも勝利を最優先させるキャプテンとしてセレッソをけん引している。

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