FIFAが問題視している、“青田買い”の弊害
2.国際移籍禁止の目的
なぜ若年選手の国外移籍が原則として禁止されているのでしょうか。
主たる目的は、若年選手の保護や教育の充実です。
従来から、強豪クラブによる途上国の若年選手の青田買いがされていました。選手は生まれ育った地を離れて生活することとなりますが、プロとして活躍できる選手はほんの一握りであり、プロになれなかった選手は十分な教育を受けないまま世間に野放しになってしまいます。
また、悪質な代理人等による人身売買にも似た取引も問題視されてきました。
選手の保護という目的に加え、ビッグクラブによる過度な補強を抑制する目的も含まれているのではないかと筆者は考えています。
いずれにしても、近年FIFAは若年選手の国外移籍に関して厳格な姿勢をとっており、今回の声明でも、禁止規定は厳格に適用されるべきであると強調されています。
3.補強禁止処分がもたらす影響
本件のような処分は、現在対象クラブに所属している選手にどのような影響をもたらすのでしょうか。
本件では、90日以内の正常化措置も課されているので、違反の対象となった選手については試合出場ができないといった状態になり、出場機会を得るために退団を余儀なくされる可能性は大いにあると考えられます。
現在マドリーの下部組織に所属する中井卓大選手も、上記の国際移籍禁止の例外に該当しない限りは違反の対象となってしまいます。そのため、バルセロナを退団した久保建英選手と同様に、退団そして日本に帰国するという結末になってしまうおそれがあります。
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