残留争いの行方は
優勝争いが盛り上がれば、それだけ残留争いも白熱していく。今季、昇格を果たしたのは大宮アルディージャ、ジュビロ磐田、アビスパ福岡の3チームだ。大宮、磐田は主力の流出を最小限に留めた印象。伊野波雅彦と駒野友一が抜けた磐田だが、補強とチームの一体感でカバーするつもりだ。大宮は江坂任、沼田圭悟とJ2でも目立った選手を獲得している。
昇格組の中では福岡が心配か。昨季終盤は驚異的な追い上げを見せ、自動昇格はできなかったがプレーオフでも勢いを維持して最後の椅子に滑り込んだ。当時のチームで出色のパフォーマンスを見せた守護神の中村航輔だが、期限付き移籍期間を終えて退団した。
ロンドン五輪の銅メダル獲得メンバーのひとりであるイ・ボムヨンを獲得したのは大きいが、最終ラインとのコミュニケーションなど不安要素はある。他にも主力級の選手を獲得しているが、連係面を高められなければ厳しいシーズンとなってしまうだろう。
基本的には昇格3チームの第一目標はJ1残留だ。磐田の名波監督も「勝ち点40」に最初の狙いを定めているように、残留ラインと言われるポイントに到達しない限りは安心できない。
安心できないのは、この3チームだけではない。ヴァンフォーレ甲府は攻撃の中心だった伊東純也、阿部拓馬が抜けた。クリスティアーノが復帰したとはいえ、マークは彼に集中する。攻撃に不安のあるチームだけに、他の選手が得点に絡めなければポイントを稼ぐのは難しいのではないか。
そして、監督交代により戦い方も大きく変わりそうなのが、柏レイソルと名古屋グランパスだ。
柏のミルトン・メンデス監督は陽気な性格でサポーターの心は掴んでいるようだが、監督としてトップクラブを率いた経験が少なく、UEFAのコーチングライセンスを持っているとはいえその手腕は未知数と言わざるを得ない。名古屋は新監督に小倉隆史氏を据えた。初めて監督を務めるだけでも大変だが、クラブ全体に目を配らなければならないGMも兼任とあって、プレッシャーも大きいはずだ。周囲がサポートできなきなければ、チーム状態はどん底まで落ちる危険性がある。
ここまで、優勝と残留争いに的を絞って駆け足で展望したが、これはあくまで予想である。思わぬチームが優勝争いを盛り上げるかもしれないし、強豪が下位に沈むことだって十分に考えられる。そうした一種のカオスがJ1の面白いところでもある。
今季のJ1は、どのようなフィナーレを迎えるのだろうか。
【了】