圧倒的パスサッカーでJ3を席巻。Jリーグ参入1年でJ2へ
昨季開幕当初、Jリーグ参入1年目の山口がJ3を制するなど誰が予想しただろうか。蓋を開けてみれば開幕から5連勝で首位に立つと、第2節以降は一度も他のチームをてっぺんに立たせず優勝を成し遂げた。
最終的に町田と勝ち点で並びながら優勝できたのにはわけがある。それは圧倒的な攻撃力だ。36試合で96得点、1試合平均に直すと約2.67点も挙げている計算になる。32得点をマークしてJ3得点王に輝いた岸田和人を始め、19得点の福満隆貴、16得点の島屋八徳と得点ランキングトップ3は全員山口の選手だった。
この3人はいずれも昨季までJリーグでプレーした経験がなく、JFLや地域リーグ出身という点を考えればどれほどの偉業か容易に想像できる。そして上野展裕監督の手腕も賞賛されてしかるべきだろう。
山口が標榜したのは徹底してパスで崩し切るポゼッションサッカーだった。人とボールを自分たちのペースで動かし続け、どんな時も簡単にロングボールを蹴らない。試合の主導権を掌握し、理想の形でシュートまで持ち込むことを求め、選手達は実行して見せた。
夏場以降若干失速し、町田に迫られたが常にアグレッシブで見るものを魅了するサッカーを展開してJ3に旋風を巻き起こしている。資金力に恵まれてるわけではなくJ3でも決して予算は潤沢な部類に入るわけではないため、J2では昨年以上に厳しい戦いが予想される。
だが、上野監督が掲げるスタイルに変わりはない。自分たちのサッカーがどこまで通用し、どこで現実的な路線に切り替えるのか、微妙な見極めが勝負を分けそうだ。補強も20台前半の選手が大半で、J3からの引き抜きから若手のレンタルが大半を占めている。時間をかけて作りあげた組織に新戦力がどれほどのプラスをもたらせるかが躍進の鍵を握る。