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Jリーグ 9年前

ハンド判定を“ミス”と認めた審判委員会の意図。オープンな議論がもたらすリスペクトの姿勢

text by 藤江直人 photo by Dan Orlowitz , Asuka Kudo / Football Channel, Getty Images

追加副審の導入が限定的である理由

 もっとも、チャンピオンズリーグなどではAARも主審が務めている。今シーズンにおけるJ1担当主審は総勢23人。毎節のようにAARを導入するわけにはいかず、公式戦の一部に限定した。上川委員長が言う。

「本来ならばJ1の全試合で導入したいけれども、だからといってJ1の主審だけを一気に増やすわけにもいかない。J1の副審でもAARを務められるのか、J2の主審や副審でも大丈夫なのかといった点を検証していく必要がある。

Jリーグとも話し合っていくことですけど、今年1年だけでなく、来年1年をかけてもJ1の全試合に導入するには間に合わないかもしれない。それでもJクラブが求めるのであれば、我々はプロリーグですので、それに応えられる体制にしていきたい」

 今年に入り、IFABはビデオ判定の導入にも前向きになっている。微妙なゴール判定、PK、退場判定の3つに限定する形で、来シーズンのオランダリーグで試験導入される予定だという。

 ボックス・トゥ・ボックスのスピードがさらにアップしていく現代のサッカーにおいて、生身の人間である主審の判断を助けるための手段が、さまざまな分野で講じられるようになってきた。

 そうした状況下で、シーズン最初の公式戦で勝敗を左右する「誤審」が、地上波で生中継された一戦で全国へ発信された。冒頭で試合後の審判団への取材が原則禁止と書いたが、逆も然り。審判団が判定に関するコメントを発する機会もまた設けられていない。

 ゆえにファンやサポーターの批判の対象となりやすい状況を生み出してきた。しかし、日本サッカー協会の審判委員会は今回のカンファレンスで「誤審」であることを認め、そのうえで忌憚のない意見を披歴し、AAR導入を含めて、メディアを介して再発を防止するための決意を外部へ発信した。

 人間は誰でもミスを犯す。大切なのは、ミスを繰り返さない努力を積んでいるか否かだ。日本サッカー協会の審判委員会はスーパーカップ前日の19日にも、J1およびJ2を担当する主審のフィジカルテストなどを実施。コンタクトプレーの見極めなど、今シーズンの判定基準を全員で徹底して共有している。

 文字通りサッカー界を挙げる形で、ミスが起こる確率を可能な限り引き下げる努力が続けられている。サッカー界に関わる全員がこうした姿勢を理解して、ともにリスペクトの念を抱き合いながら長いシーズンへ臨まなければいけないことを、あらためて教えてくれた一件だったと思っている。

【了】

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