昨季のチームはそのままにピンポイント補強。唯一の不安要素は…
最大の収穫は昨季1年かけて作りあげたチームをほぼそのままの形で継続できたことだろう。レギュラークラスで抜けたのは徳島へ移籍したカルリーニョスのみだ。絶対的地位を築く家長が残留し、得点源のムルジャも健在。そこに新たな戦力が加わり、純粋なプラスをもたらしている。
特に千葉から獲得したネイツ・ペチュニクは今年最大のヒットになりうる。日本で現役引退を望むスロベニア代表FWは攻撃的なポジションならどこでもこなせるうえ、J挑戦1年目の昨季は14ゴールを挙げて類い稀な得点力も証明した。大宮では右サイドでの起用が濃厚だ。
また懸案だった左利きの左サイドバックとして讃岐で躍動した沼田圭悟が加わった。昨季まで日替わりだったポジションに新たなレギュラー候補が出現し、定位置争いは激しさを増している。
カルリーニョスの抜けた穴には松本から岩上祐三を補強した。ロングスローという武器を持つ「オフェンシブな守備的MF」は10番を託され、特大の期待を背負っている。そして群馬から加入の江坂任もブレイクの可能性を秘めている。
各ポジションに即戦力を獲得しただけでなく、ユースから4人を昇格させるなど次世代を見据えた策も講じた。渋谷監督の下、長期的な視点に立った強化でクラブの“色”を生み出そうという意思が透けて見える。
唯一の不安要素は前線の選手層が薄い点だろうか。家長とムルジャ2トップは不動だが、それに続く選手が心もとない。緊急時はペチュニクも起用できるとはいえ、戦力として計算できる控えのストライカーは昨季Jリーグ最年長ハットトリック記録を樹立した播戸竜二のみ。レギュラーが負傷などで離脱を強いられれば一気に厳しくなる。
これまでの10年間は毎年残留争いに苦しめられ、下位クラブとして場当たり的な選手の獲得や放出を繰り返した。今年はその悪しき文化を断ち切り、新たな大宮アルディージャとして生まれ変わった姿で再びJ1の舞台に挑む。