2度のチャンスは本田から。戦術的に意図に沿った攻撃
次に攻撃である。ナポリに圧倒される中、ミランの枠内シュートは2本。本田のクロスが呼び水となったボナベントゥーラの先制ゴールと、本田自らが放ったミドルシュートによるもので、要は少ない決定機に本田が関わっていた。
そしてその2本とも、戦術的に意図に沿ったプレーをしていた。アウトサイドに大きく開いて幅を取り、ボールを呼び込んだ後にゴールの方向を向く。この時、利き足の左足はゴール方向にアングルを取る。そこから左足で鋭い弾道のクロスを入れたのが前半44分の同点ゴールだ。
結果的にはDFの頭を経由することになったが、速く強いボールを入れればアクシデントも誘発できる。その定石通りのチャンスメイクとなった。
大きく開いて幅を取り、相手DFラインの枠を広げたところにシュートをねじ込んだプレーも意図は同様である。左利きでウイングに特性はないと自ら認める彼をあえて右のアウトサイドに配置した、逆足ウイングとしてのプレーが板についてきた。今回はレイナに阻まれゴールはならなかったが、今後の試合でのさらなる得点も期待できそうだ。
残念だったのは、攻撃陣にボールロストが多くてチャンスを作りきれなかったこと。本田にも勿体無いコントロールミスはあった。そこが解消に向かえば、ミランは本当に上位3位への肉薄を果たすかもしれない。
ただ唯一の不安要素は、ベルルスコーニ名誉会長が納得したのかいうことだ。この試合のパフォーマンスは単純な支配率やシュート数で判断されるべきではないのだが、果たしてドローを評価するのだろうか。
ナポリのマウリツィオ・サッリ監督が「我々の前に、予算規模もはるかに大きいミランがプロビンチャ(地方クラブ)のようなサッカーをした」と語っていたが、こういうのもまた、ベルルスコーニが屈辱と思うであろう一言だ。
「あの人がおとなしく黙っていられるわけがない。現在の戦力規模から考えれば、今日の内容の試合が出来ただけでも良しとするべきなのに」と『ラ・レプッブリカ』紙のエンリコ・クロー記者は語った。
チーム一丸となって戦う現在の路線をこのまま貫徹できるのかどうか、ミランと本田の奮闘は続く。
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