投資サイドの撤退はイベリア半島の混乱を招く恐れも
選手の移籍によって収入を得るという形式である以上、投資ファンドがクラブや選手に移籍を強いているのではないかという疑問は当然のように湧いてくる。FIFAがTPOを問題視し、これを禁止したのはそれが理由だ。だが昨今、ドイエンはTPOとは別のビジネスモデルとしてTPI(「第三者による投資:Third-party Investment」)なるものを提唱している。
英国メディア「インサイド・ワールド・フットボール」によれば、2016年1月に行われた欧州議会の「スポーツ・インターグループ」による公聴会で、ドイエンのCEOであるネリオ・ルーカスは「投資家が他の人間を所有するなどという発想は馬鹿げているし、我々が100年も前に廃止したアイディアだ」と述べ、TPO反対の姿勢を取っていたという。
だが彼らはTPOに反対しつつ、TPIというビジネスモデルを擁護していた。ドイエンの主張によると、TPIでは、投資家ないし投資ファンドは選手の経済権を取得せず、さらに選手の移籍等に口出しもせず、ただ銀行のように貸し付けを行うだけ、ということらしい。そしてドイエンは「我々は全方位型のスポーツ代理店であり、TPIは活動の一部でしかない」とも述べている。
TPOを禁止してTPIを認めたら事態が変わるのだろうか。これについては大いに疑問が残るところだ。だが、我々の問い合わせに対してドイエンが語ったように、投資ファンドによる資金供与がなくなるとなれば、サッカー界の勢力図が激変する可能性は高い。
ドイエン「今回のプロセスにおける本当の敗者は、アトレティコ・マドリー、セビージャ、FCポルトなどのクラブだ。彼らはヨーロッパで最も裕福なクラブ群には位置づけられないが、持続可能かつ信頼できるツールであるTPIのおかげで、そうしたクラブにトップステージで挑戦している。
スペインとポルトガルの両リーグはFIFAの禁止処分について反対しており、この禁止によって最も影響を被るのが、それに反対する彼らだということは明白だ」
確かにレアル・マドリーやバルセロナといったメガクラブを除くと、投資家の撤退によりスペインやポルトガルのクラブが著しく競争力を失うということは十分にあり得るだろう。
ドイエンが言うように、FIFAの禁止処分によって最も影響を受けるのは、スペインやポルトガルのクラブということになるだろう。TPOによる取引は、とりわけポルトガルのクラブがらみのものが目立っていた。このことは、ポルトガルを拠点にFLが活動を開始したことと無関係ではないようだ。
FL「我々は長い間、このプロジェクトをスタートさせようと思っていて、資料を集めつつ、然るべき時を待っていた。ターニングポイントは、昨夏ポルトガルの移籍市場で不透明さが問題になったことだ。まずはポルトガルの諸クラブが抱える嘘を開示しようと思っていた」