偉大な主将にも温情を与えなかった“帝国”
実際、フース・ヒディンク暫定体制下で上向いた過去2ヶ月間でチェルシーのベストDFを選べばテリーになるだろう。機動力のあるクルト・ズマとのCBコンビが好調だったが、そのズマはポジショニングが課題。ユナイテッド戦で膝の靭帯を痛めた21歳は長期欠場明けの来季に再起を期すことになることから尚更、若い頃から洞察力と判断力でスピード不足を補ってきたテリーからのノウハウ吸収が効果的だと思われる。
加えてテリーには、そのズマが「代わりなんていないよ」と言う最終ライン統率者としての存在感がある。
検査の結果、16日のPSG戦第1レグ(1-2)でテリーを欠場させたヒディンクも「契約延長を進言する」と言っている。但し、「意見を求められれば」という条件付き。進言の機会は、今年70歳の暫定監督が来季続投へと翻意することでもない限り訪れそうにない。
オーナーと懇意のマイケル・エメナロが補強担当役員を務めるフロントは、新体制での来季開幕に向けて、ジョン・ストーンズ(エバートン)獲得を狙った昨夏以上に今夏の新CB獲得に力を入れるはずだ。
一方のテリーも、「プレミアリーグの他クラブはあり得ない」と言って移籍先を狭めても選択肢には事欠かない。現役最後の一稼ぎを狙うのであれば、新手の中国や、チェルシーの元先輩ジャンフランコ・ゾラが監督を務めてもいる中東のカタールがある。トップレベルにこだわるのであれば、CL出場があり得るトルコのフェネルバフチェが予てから興味を示している。親友のランパードも選んだ米国MLSは、ピッチ上は異質でも私生活は居心地の良い英語の世界だ。
もちろん、当人がユース入りした14歳当時から「ホーム」と呼ぶスタンフォードブリッジでは、ファンが微かな期待を込めてテリー残留を願うチャントを今季最終節まで歌い続ける。『JT CAPTAIN, LEADER, LEGEND』の横断幕も不動だ。
しかし同じ南スタンドには、皮肉なことに『THE ROMAN EMPIRE』とある一枚も。とどのつまり、チェルシーはアブラモビッチが牛耳る帝国なのである。
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