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テリーはなぜ退団発言をしたのか? チェルシーの偉大な主将の決断を迫らせた“帝国”の実情

text by 山中忍 photo by Getty Images

36歳なれど…主将は契約延長の価値あり

アブラモビッチ
チェルシーのロマン・アブラモビッチオーナー【写真:Getty Images】

 だがそれ以上に、第1期ジョゼ・モウリーニョ体制の2004年から黄金期を支えた最後の生き残りが意に反して去ることになる状況こそが、ロマン・アブラモビッチのチェルシーらしい。時に冷酷なロシア人富豪が所有するクラブは、「潮時」の判断に情を挟むことなどあり得ない。

 既に去ったフランク・ランパードやディディエ・ドログバと同様、「新たに役職を設けてもよい」とする将来的な帰還歓迎はテリーにも共通だが、現役としての残留に関してはクラブ側が設ける一線を譲らない。

 ファンジン(同人誌)『cfcuk』の編集者も言っていたように、筆者も「他のベテランとは存在意義が違うテリーには温情を示しても良いのでは?」と思っていたが、アブラモビッチにすれば、逆に影響力を持つ長年の主力だからこそ余計に譲れないのかもしれない。

 オーナーには、スタイル変更と世代交代を担う新監督として自ら抜擢したアンドレ・ビラス・ボアスが、ベテラン勢との確執で短命に終わった苦い経験もある。テリーに関しては、人種差別発言や不倫の疑惑が生じた際の完全擁護で既に特別な温情を示したとの認識があるとも考えられる。過去2年間で2度の新1年契約締結も、監督に復帰したモウリーニョの後押しがあってのこと。そのモウリーニョは昨年12月に再びクラブを追われている。

 来季半ばには36歳という年齢を横に置いて物を言えば、チェルシー色の青い色眼鏡を通さずともテリーは新1年契約に値するCBに見える。リーグ優勝の昨季は全38節に先発フル出場。去る2月13日、ハムストリングを痛めて前半で退いたニューカッスル戦後の会見で、3日後のCL戦で「テリーに無理を強いる用意は?」との質問が出たように、その実力と重要性は今季もメディアで評価されている。

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