「もっと本気に」。太田の向上心は無限大
「取られたら5秒以内に取り返す」サッカーを掲げるフィテッセにおいは、アグレッシブな姿勢と相手の自由を奪う激しい守備の両方が求められる。常に多くのことを要求される環境にあっても、太田は充実の表情を浮かべる。
ヘーレンフェーン戦はそういった意味で重要な試合となった。これまで取り組んできたことが完璧な形で結果になって現れた。太田自身も「今日はちょっと吹っ切れてやれましたね。守備にしても攻撃にしても久しぶりにやりたいようにやれたというか、ほとんどミスもなかったと思う。ここからかな」と上だけを見据えている。
もちろん1人の力だけで勝てるほどサッカーは甘くない。周りの選手との連携やサポート、監督やコーチ陣からの指導、日常的なコミュニケーション、ファンの応援…たくさんの要素が化学反応を起こして始めて勝利が生まれる。
1つのアシストを残したからといって、決してそこがゴールではない。フィテッセは5位につけているものの現在首位PSVに20ポイント差をつけられているため優勝は難しい。だが3位ヘラクレスとの勝ち点差はわずか2ポイントで、欧州カップ戦の出場権を狙える位置にいる。
日本を背負って海を渡ったサムライは左SBのポジションを獲得し、オランダに来て攻守両面にわたって確実に成長していることを実感している。細かな課題は残されているが、28歳での欧州移籍は早くも成功と言っていいだろう。そして全力疾走してきた中でもまだまだ満足はしていない。「今日で終わりにしないでこれを続けなきゃいけないと思うし、もっと本気にならないと」。太田はそう言い残して帰路に着いた。
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