奇策による伝統回帰
クライフ監督によってカンテラから引き上げられ、ドリームチームの頭脳として活躍したグアルディオラにとって、サッカーとはバルサのサッカーにほかならない。血肉化していて、疑いの余地すらない。当然、新しい監督としてバイエルンに持ち込んだのはそれだった。ただ、流し込んだ成分はバルセロナでも、それはバイエルンという違う形の中で固まる。
グアルディオラ監督は一種の奇策家でありイノベーターだ。バルサ時代のメッシを使ってのゼロトップ、バイエルンでのアラバの三点移動(サイドバック→ボランチ→インサイドハーフ)、ゼロバック、4トップ……斬新なアイデアで常に周囲を驚愕させてきたが、どれにも共通する狙いがある。
ボール支配力の強化と選手の特徴を生かしきることだ。より確実に運び、より強力にフィニッシュするための発明の数々といえる。
コスタとコマンの両翼を得た今季、チームの二大ゴールゲッターであるレバンドフスキとミュラーが2トップを組む。バルサの教義に2トップはないが、ペップのアイデアとして違和感はない。思考過程は従来どおり。そしてバイエルンはこれまで以上にバイエルンらしくなった。
ところで、バルサ・スタイルのオリジナルはクライフだと書いたが、それ以前にもモデルがある。ペップにとってのクライフにあたるのは、いわゆるトータルサッカーの開祖リヌス・ミケルスになる。
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