バイエルンをバイエルン化したグアルディオラ
グアルディオラはバイエルンをバイエルン化した。それ以前にバルセロナをバルセロナ化したように。だからこそ、世界一の監督と絶賛される。
ペップがバイエルンに着任したとき、バイエルンがバルセロナ化されるのではないかと危惧されていた。しかし、3シーズン目の今季、バイエルンはよりバイエルンらしくなっている。4-4-2のフォーメーション、ハイクロスを使ったゴールへのアプローチなど、紛れもなくバイエルンであってバルセロナではない。
バルセロナで「これぞバルサだ」と、ファンが納得するサッカーを作り上げたように、ミュンヘンでも実にバイエルンなチームに到達したわけだ。
ところが、「これぞバルサ」「いかにもバイエルン」と言いながら、そんなバルサやバイエルンを過去に見たことのある人などいない。
バルセロナの監督時代、ペップはバルサのサッカーを「ラファエロ」にたとえた。ルネサンスの巨匠ラファエロは膨大な作品を遺したが、その多くは工房の弟子たちが仕上げたものだという。つまり、オリジナルをデザインしたのはヨハン・クライフであり、自分は「弟子」の一人にすぎないというわけだ。
確かにアイデアはクライフ監督の90年代からあった。しかし、それが現実のものとなったのは20年を経たペップの時代である。イメージにすぎなかったサッカーが実現したとき、人々は「まさにバルサだ」と感じたのだが、それを見るのは実ははじめてだったのだ。
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