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徐々に姿を現したジダン・スタイル。試合を支配する“遅攻”とCR7を生かす“速攻”の同居

text by 海老沢純一 photo by Getty Images

マルセロとの相性でハメスに勝ったイスコ

 ベニテス監督は、様々な状況に対応するために1つの形に寄るのではなく、フラットな状態で試合に入るスタイルだった。そのようなスタイルは柔軟性が生まれてプラスに働くこともあれば、どっちつかずでチームの強みが見えにくくなることもある。

 選手と監督との関係が悪くなったり、チーム内の一体感が失われた前体制のの末期では、まさに後者の状況に陥っていた。

 しかし、この試合ではキックオフの笛から明らかに最終ラインからのパス回しを重視していた。

 4人の個々のパス本数を見ると、マルセロ92本、セルヒオ・ラモス80本、ヴァラン68本、カルバハル57本。そして、この4人の今季の平均パス本数を見ると、マルセロ61.9本、セルヒオ・ラモス52.8本、ヴァラン45本、カルバハル41.8本。全員が平均を大きく上回るパスを繰り出していた。

 また、最多パス本数を記録した左SBのマルセロのパスの流れを見ると、最も多くパス交換をしていたのが左インサイドハーフのイスコとの52回だった。マルセロはサイドバックというポジションでありながら、ゲームメイクの中心的役割を担っていたといえる。

 ここにジダン監督がインサイドハーフのポジションにハメス・ロドリゲスではなくイスコの起用を優先させる理由がある。アタッカータイプのハメスよりもショートパスでゲームを組み立て、ボールキープもできるプレイメーカータイプのイスコの方が中盤には必要だと考えたのだろう。

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