イラクを襲った度重なるテロの恐怖
【イラク 2-1 カタール AFC U-23選手権3位決定戦】
2016年1月29日。イラクサッカー界にとって歴史的な一日となった。
90分を終えて、U-23イラク代表対カタール代表は1-1の同点。勝負は延長戦にもつれ込んだ。両者に疲れが見えつつも懸命にプレーを続けた109分、アイメン・フセインが頭でゴールにねじ込みついにイラクが逆転に成功した。
そのまま試合は2-1で終了。イラク代表はアテネ大会以来3大会ぶり5回目のオリンピック出場を決めた。
イラク代表にとって、今回の五輪出場権はサッカー界を超えた国民の期待を背負っていた。国内情勢が不安定を極め、度重なるテロの恐怖が国を覆った。
昨年3月にはイラクの首都バグダッドで爆弾テロが発生。U-23イラク代表のマフディ・アブドゥル・ザフラが事件に巻き込まれて命を落とした。ザフラは19歳にしてU-23代表に選出された希望だった。
そして、同年7月にはアル・アンバルスタジアムがIS(イスラミックステート)によって爆破された。約3万人収容の巨大なアル・アンバルスタジアムは、戦時中ということもあって完成から未だ一度もスポーツに使われたことがなく、イラクスポーツ界復興の象徴として機能するはずだった。
日本代表との親善試合で0-4と大敗を喫した際にも、アクラム・セルマン監督は「戦争の影響も選手たちのパフォーマンスに影響を与えている」と語らざるをえなかった。それだけイラク代表選手たちは追い込まれていたのだ。