3部相手ながら苦戦したミラン
トリノのスタディオ・オリンピコは、思った以上に観客で埋め尽くされていた。アレッサンドリアは実に約2万枚のチケットを売り、クラブに割り当てられた分はすべてソールドアウト。当日券を購入しようとやってきたファンが無念にも断られるシーンを目撃した。人口約9万4000人、単純に考えればそのうち20%がこの試合にやってきた、という計算になる。
セリエAばりの選手紹介あり、ゴール裏では巨大フラッグの掲示ありと、さながら雰囲気はセリエAの試合。ファンは夢心地になったはずである。そして試合が始まると、アレッサンドリアはミランに対しアグレッシブに戦った。守備ではしっかりスペースを閉め、ミランの選手に対し球際で厳しく体を寄せる。数的優位で囲むのも早く、ボールを奪った後の速攻はもちろん速い。ミランにとって、全く簡単な相手ではなかったのである。
第3部は、攻撃的な組織サッカーが意外と展開されやすい。セリエAはいざ知らず、セリエBと比べても注目度は低いが、その分指導者がプレッシャーを気にせずサッカーの質を追求できる。さすがに個人技のレベル差はどうしようもないが、舐めてかかればチームとして痛い目を見る。実際パレルモやジェノアは、彼らに攻めきられて負けた。
一方、ミランはどう戦ったのか。相手の激しいフォアプレスの前にビルドアップができず、中盤ではボールを失った。相手にミスがなければもっとシュートを枠に入れられている恐れもあったが、失点ゼロにコントロール。しかし、得点はPKの一つのみにとどまった。
「勝つことが目的だったし、それは達成した。しかし決定的なチャンスを2、3度外した。しかも外す方が難しいような場面で、見事に外してくれた。もう1ゴール決められていたら、今日で決勝進出を確実にできたのに」。試合後、シニシャ・ミハイロビッチ監督はにこりともせずそう言った。その中には、本田圭佑のプレーもカウントされていたはずだ。
後半5分、ミランが左サイドを攻略し、バロテッリが折り返した先には本田が中に絞ってきていた。エリア手前でボールを受けた彼は、アレッサンドリアの守備陣の連携が崩れたところにシュートを狙う。しかしシュートは相手に当たり、CKにはなったものの大きくそれた。自身にとっても久々に訪れたシュートチャンスだったのだが、無情にも外してしまった。