もはやユベントスの補強に“失敗”は存在しない
現在のイタリアサッカー界において、ユベントスが保有権を所有していない有力な若手選手を見つけることの方が難しい状況となっている。もはや残された選手は、ミラン、インテル、ローマといったビッグクラブの下部組織出身者、もしくはユベントスの目が届かない外国人選手のみである。
先日もユベントスはロランド・マンドラゴラとステーファノ・センシという有力な司令塔候補である2選手を確保した。マンドラゴラは保有権を買い取り、所属元であったペスカーラに期限付き移籍で残留させた。センシに関してはサッスオーロが保有権を獲得し、期限付き移籍の形で所属元のチェゼーナに残留させ、ユベントスが買取オプションを行使する権利を獲得した。
前述した2選手の特性は似通っており、両選手がユベントスでともにスターティングメンバーとしてプレーする可能性は非常に低いといえる。しかし、ユベントスにとっては全く問題がないことである。未来のことは未来にならなければ分からない。重要なのは、必要な時にユベントスが獲得できる状況、選択権を確保しておくことであり、これらの移籍がユベントスにとって“失敗”となることはありえない。
そして選手にとっても、ユベントスが保有権を持つことで適切なレンタル先のクラブでプレー機会を与えられ、成長を促されるためにデメリットは少ない。レンタル先のクラブを活用した選手育成に関しては、ユベントスがイタリアで最も実績を持っている。この補強戦略を強化するために、ユベントスは今季から“期限付き移籍”専門のSD職を置いている。
巧みな若手選手の移籍戦略で有名なウディネーゼやジェノアとユベントスが異なる点は、ユベントスは決して“掘り出し物”を見つけているわけではないことだ。同クラブが獲得する若手選手は育成年代で注目された“有望株”揃いで、あくまでユベントスは資金力を武器に適正な価格で早くに保有権を確保しているにすぎない。
このような状況はバルセロナも、レアル・マドリーも、マンチェスター・ユナイテッドも、アーセナルも、チェルシーも、パリ・サンジェルマンでさえも起きていない。現在のイタリアはおそらく欧州で最も若手タレントが集中している国といってもよいだろう。有望な若手イタリア人選手は全てユベントスが囲い込むといっても過言ではない状況となっている。
このような補強戦略を世界中の若手を確保する資金力のあるクラブが実行したら、いったいどのようなことが起こってしまうのか、考えるだけでも恐ろしい。
セリエAは今後もユベントスによる絶対王政は揺るがないだろう。唯一対抗できるとすれば、優秀な外国人選手のみでチームを構成することができるインテルのみだ。それほどまでにイタリア人のタレントはユベントスに集中している。同クラブの圧倒的な補強戦略が、今後サッカー界にどのような影響を与えるのか注目したい。