イタリアの全若手を囲い込む圧倒的な選手管理システム
しかしながら、ユベントスが欧州でも注目に値するべき存在である理由は、単に“選手の目利きが上手い”からではない。「超大量補強による若手の完璧な囲い込み戦略」を完成させつつあるからだ。
スクデット(リーグ優勝)を手中に収めイタリアにおける絶対的な地位を築きあげた2012年頃から、ユベントスは“必ずしも必要のない”若手獲得を開始した。それは、まるでイタリアの有力な若手全てを獲得しようと言わんばかりの勢いだ。過去5シーズンにおける獲得選手数は、なんと60選手。主要14クラブで最多となる選手数を獲得し、大量補強が印象的なチェルシーの47選手に大きく差をつけている。
ユベントスは前回特集したチェルシーと並び、欧州でもずば抜けて“期限付き移籍”による選手育成が巧みなクラブとしての地位を確立している。これによって、抱えきれない数の大量の選手を獲得し、選手の育成状況をみながらトップチームに復帰させるかどうか判断できる状況を作り上げている。
最も代表的な例はマノーロ・ガッビアディーニで、同選手はアタランタ下部組織で育ちながら2012年にユベントスが保有権を購入した。その後、ボローニャ、サンプドリアで経験を積み、結局一度もユベントスではプレーせずにナポリへの移籍を果たしている。しかし、ガッビアディーニはユベントスが獲得したことで出場機会を失ったわけでもなく、むしろ順調にレンタル移籍先でキャリアを積みナポリでも十分な戦力として活躍をみせている。
下部組織出身のため今回の分析結果には反映されていないが、現トリノ所属のチーロ・インモービレも同様の道を歩んでいる。ペスカーラ、ジェノア、トリノで経験を積み、セリエAで得点王となるまでに成長した。しかし、トリノから保有権の半分を買い取るコスト、カルロス・テベスとフェルナンド・ジョレンテという攻撃陣、またアントニオ・コンテ監督との相性を考慮され、得点王となった直後にドルトムントに移籍した。
これらの選手はユベントスにとっては「必要であれば獲得できる状況に置いておき、結果的には獲得しなかった」選手たちである。ユベントスは圧倒的に優位な立場から、若手選手を選定することができるのである。