シーズン移行で生じるメリットとデメリット
もちろん、「秋春制」への移行はメリットもあればデメリットもある。
外的な要因に影響されることなく、過密日程を回避できるスケジュールを組みやすくなる点はメリットのひとつ。国際Aマッチデーが設けられていない4月から5月がシーズン終盤となることで、優勝争いの佳境が「飛び石日程」でスポイルされる事態も回避できる。オフの期間も全クラブがほぼ同じとなる。
ヨーロッパのシーズン開幕に合わせて日本人選手が移籍する場合、現状では日本のシーズンの真っただ中に主力選手が抜ける非常事態も好転させることができる。
日本代表FW武藤嘉紀が昨夏にマインツへ移籍したFC東京が、セカンドステージの戦いで苦戦を強いられたことはまだ記憶に新しい。逆に現状でいう日本のオフ、ヨーロッパのシーズンの途中に移籍した日本人選手が、順応するまでに苦闘するケースも減ってくるはずだ。
対照的にデメリットは、これまでにも何度も指摘されてきた降雪地域のクラブに対する配慮となる。1月と2月をウインターブレークとしても、前後の時期に降雪する可能性までは排除できないし、何よりもスタジアムの屋根や練習環境などを含めたインフラ整備策を、地元自治体などと講じなければならない。
Jリーグのシーズンを「秋春制」に変更しても、ACLが現状の「春秋制」ならば齟齬が生じてしまう。AFC側を巻き込み、イニシアチブを取った交渉を展開していくことももちろん必要不可欠になってくる。
たとえば今シーズンにしても、ACL決勝の日程は、2戦とも現時点で未確定となっている。したがって、Jリーグ側はチャンピオンシップ準決勝と決勝第1戦の日程が変更になる可能性があるとしている。
AFCの動向は、なかなか伝わってこないという。こうした点を踏まえて、同じく会長選に立候補している原博実専務理事は「秋春制」への移行を「以前から検討していること」ととらえながら、実施にはやや慎重な姿勢を見せている。
もっとも、Jリーグの実行委員会は2013年6月の時点で、「然るべき時期にシーズンを移行する」ことで合意に達している。J2を含めた全クラブの実行委員、つまり代表取締役による全会一致なので、降雪クラブも同意していることになる。