一国家が政策として一クラブを利用するモデル
2011年にPSGを手に入れたのも、戦略カードのひとつだった。
開催国、つまりは受け側である「ホスト」の彼らが、世界に向けてアイデンティティを発信する側になるためには、「使者」が必要だった。
そしてPSGが影響力のある使者になるためには、彼らが世界的に注目を集めるビッグクラブでなければならない。
そのためには時間とお金をかけて、まずPSGをビッグクラブに育て上げる。そして、育った彼らを広告塔として使う。
一方のPSGは、カタール陣営が参画したことで経済力が大幅にアップした。
先週木曜にクラブから発信されたリリースによれば、2014?15シーズンの総収入4億8400万ユーロは4季前の5倍、スポンサーからの収益にいたっては、彼らが参入する前の、なんと13倍に膨れ上がったという。
毎年ウィンターブレイクには、アスパイアで合宿を行い、今回はインテルミラノを招いて親善試合を行なった。
また、選手で故障者が出れば、当然ながらアスペタで最新の治療を受けることができる。
つい先日もルーカスとオーリエが滞在していたが、治療後のリハビリや、オフ時のトレーニングなどでも、アスパイアの育成センター内の最新鋭のプログラムが使用できる。
パリ郊外にあるクラブのトレーニング場はサンジェルマン市の所有地であることもあり設備にも限りがあるが、カタールにひとっ飛びすれば、世界最高峰の設備環境でトレーニングや体調管理が行なえるのだ。
またPSGの選手だけでなく、イングランド・プレミアリーグのクラブもアスペタを利用している。フッキ、ドログバ、サニャなどのトップ選手もここで治療を受けた。
またアスパイアのトレーニング施設の方も、彼らのポータルサイトによれば、ウェイン・ルーニーやルカ・モドリッチ、セルヒオ・ラモス、日本の香川真司や内田篤人ら、2014年のW杯出場選手のうち57人が利用経験をもつという。
スポーツビジネスの世界展開という、一国家の政策に一クラブが使用されるという、これは新たなモデルケースだ。そして両者がWIN-WINの関係にあるということ。
カタールとPSGの蜜月は、今後どこまで、そしてどのように続いていくのだろうか。
【了】