現代サッカーにおける模範的な補強サイクルをみせるチェルシー
チェルシーは現代欧州サッカーにおける模範的な補強サイクルを築き上げているといえるだろう。同クラブのスタイルが評価に値する理由は「経済性」と「選手の成長機会」の担保にある。
イングランド・プレミアリーグは莫大な放映権収入から、欧州で圧倒的な資金力を持っていることは周知の事実だ。チェルシーはそれに加えてオーナーであるロマン・アブラモビッチ氏のポケットマネーという切り札も存在する。
しかしながら、前述した巧みな補強戦略によってチェルシーの移籍収支は常に黒字を維持することが可能となっている。少なくとも“大失敗”となるような選手獲得はほとんど存在せず、クラブに残れなかった若手選手にも高い確率で一定の成長を遂げて新たなクラブに移籍する機会を提供できている。
実際に過去5シーズンで獲得時から選手の市場価値が500万ユーロ以上下がった例は、晩年に獲得したサミュエル・エトー、度重なる負傷に見舞われたマルコ・マリンといった選手を除けば、ファン・クアドラードのみで、同選手に関しても既にユベントスで挽回の機会を与えている。
かつての欧州サッカー界に蔓延していた“一か八かの賭け”というような空気はチェルシーの補強戦略には存在しない。堅実に、そして確実に選手の価値上昇を積み重ねた結果が、5年間で220億円の価値創造という結果に繋がっている。
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